女子高生 徳川家康

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「いえ、そうでありますかな?」 「なに・・?」 はっとそこで康子は息を呑んだ。そうだ、やけに辺りが静か過ぎるではないか。しまったっと、康子が思うよりも早く、ひゅんっと空を切り裂く音がした。小柄がぐさりと、耳次の喉笛に食らいつく。 「あぎゃあ!!?」 赤い血が迸り、耳次は醜いまでに声を上げ、どうっと倒れた。 「半蔵かっ!?」 「殿っ!お下がりなされませっ!」 そこに現れたるは白皙の美少年、服部正一。いやここは康子に倣って呼ばせてもらうならば、服部半蔵正一がギロリと鋭いにらみをきかせ立っていた。 「何・・貴様、あの服部半蔵か」 耳次は喉元を押さえ呻くが、その声はすでに蛙そのもののようである。 「康子様に牙をむくは、我が服部一門を敵に回したと同じものぞ。貴様は風魔か、黒脛か。いずれにしてもただでは済まさぬぞ」 「おぉ・・怖い怖い・・。今日のところは、退散すると致しますかな・・。康子殿、また必ずやお迎えにあがりますぞ・・」 蛙がげぇと鳴いたと思ったら、すぅっと耳次の姿が消えた。残りの男たちの姿も、ワゴンですら何もなかったように姿消し、辺りは静寂から元の喧騒を取り戻すのであった。 「忍術か・・」 康子はぶるっと震えた。 「何度見ても気色が悪い」 「そうおっしゃいますな」 ははっと苦笑いしながら、半蔵は道路に落ちた小柄を拾う。 「悪かったな。半蔵。市ヶ谷から、ここまでどのぐらいかかった」 「いえ、原チャ飛ばせばすぐでしたよ。それより井伊は?」 「井伊か?ワシも探しておるんじゃが・・」 「あっ!いたいたーとのー」 大通りの向かいからのんきな声で手を振る栗色の髪をした少年が一人。 「いた・・」
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