女子高生 徳川家康

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はぁっとため息をついて、康子と半蔵は顔を見合わせるのであった。 井伊直哉は向日葵のように笑う男である。 「いやーどこいたんすっかぁ?とのぉ。オレ、超さがしたっすよ?あ、これ。人形焼っす。超並んでて、今月の新作のラムレーズン味とか言うのかったっす。食べてくださいー」 「・・・まったく」 康子も康子で直哉にはどこか甘い。 「・・お主はいくつになっても仕様がない奴よのう」 「殿!」 「まぁ言うな、半蔵。もう過ぎたことじゃ。我等はこんなことで言い争いをするために今生に生を受けたわけではないであろう。おぉ、おぬしらも、食べてみろ。この人形焼、焼きたてでなかなかの美味じゃ」 「いえ、拙者、今甘いものは控えているので結構です」 「まじ?半蔵、キンヨク的すぎねぇ?このキャラメル味ってのもうまいっすよ。で、なに?なんかあったのー?・・って」 はしりっと。 それは見事な一瞬である。 矢じりが貫くその前に、直哉が鮮やかに箆(の)を掴み、康子目掛けて飛んできた矢を止めた。それにはさすがの康子も息を呑む。 「確かに・・何かあったみたいっすね。おや、これ何だ矢文か?」 解いた文には、見事な達筆でこう書かれていた。 『七日後、丑三つ時、毘沙門天の前にて待つ』 「毘沙門天?」 「あぁ近くに毘沙門天を祭る神社がある」 康子は顎をなでた。
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