光の魔術師と呼ばれた男

13/13
562人が本棚に入れています
本棚に追加
/301ページ
「春兄ぃぃぃぃ!」 今まで華の腕の中で怯えていた冬市は、それを振り切り、必死でそう叫びながら春市の前に飛びこんだ。 「僕の大切な人たちを…誰も死なせたくないんだ!」 ニコっと笑って、二人を見る。その咄嗟の行動に驚いた表情をしている二人。 「冬市ッ!!」 我に返った華は力を振り絞って二人の前に立ちふさがった。 目の前の光景は、最も二人にとって思い出したくないものになっただろう。蛇の目の男が繰り出した最後の魔術を、その二人の母親は、その弱く小さな体で受け止めたのである。 「「母上ぇぇぇッ!!」」 すぐさま駆け寄って春市は光の魔術を施す。 「治れ治れ治れぇぇぇ!病は治せなくても傷は治せるんだろ!?早く治れえええ!!!」 護衛の者達が来た時には、既に蛇の目の男はもういなかった。そして、自分達があと一歩早ければと後悔し、項垂れた。 泣きじゃくる冬市に、必死で最後まで治療する春市。そんな二人を抱き寄せ、華は口を開いた。
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!