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蛇の目の男は、右手と左手を合わせ、何やら呟いた後に春市に向けた。
「流石に、闇の魔術の訓練はしたことないだろう?」
その手のひらから黒い空間がぶわっと広がる。闇の魔術の効力なのだろう。春市は瞬時にその危険さを感じ取る。
(…これが闇の魔術…、そういえば)
あの本のことを思い出す。闇の魔術に対応するには、光の魔術を用いるしかないと書かれていた。光の魔術は本来ただの治癒魔術だ。それが正しいのかどうかも分からないが、春市はもはやそれしか術がなかった。藁にもすがる思いで、訓練した光の魔術。華の病を治すために研究した光の魔術。
自身を覆いかぶさろうとしているその不気味な黒い空間に向けて光の魔術を放った。
「みんなは俺が守る!!!」
すると、不思議なことに不気味な空間にヒビが入ったのである。そして、一瞬で何事もなくなったかのように消え去ったのである。
「…?!」
蛇の目の男は、予想だにしていないことに、言葉を失った。
「まさか…なぜおまえが…?」
蛇の目の男は、驚いたが最早引くしかないことを悟った。多くの足音がこちらに向かってきていたのである。
「だが、お前だけでも…ここで消しておかねばならない!」
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