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今年は春の訪れが遅い。
春一番はとっくに吹いたのだが、それから温かくなることもなく桜はつぼみを半分もつけていない。
風間はママに買ってもらったお気に入りのコートの襟をぐいと引き締め、歩き出した。
生垣の隙間からは去年死んだシロのお墓が寂しく見える。
幼い頃あれだけ広いと思っていた道路だが、車が一台通るだけで路肩に身を寄せなければならないほど実は狭く、三輪車で走っていた頃はよく事故に遭わなかったな、と風間は思う。
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