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 冬休み初めの日。携帯のバイブ音で起きたとき、もう部屋は薄暗くなっていた。布団から顔だけにょっきりと出し、かぱりと携帯を開いて時刻を確認する。 「…………まじでか」  5時10分。昨日は朝の6時まで(謎の興奮で)眠れなかったから必然的に夕方になる。なんてことだ、もう5時過ぎてるだなんて。こんなに寝たのは久し振りだ……けど、今日は何か落ちたんだろうか。外がやけに静かだ。  マサかと期待したのだけれど、携帯を震わせたのは兄貴からの電話だった。二度寝の誘惑からなんとか気をそらしつつ、応答保留の画面に切り替わる前に通話ボタンを押す。 「うぇい」 『いきなりごめん、もしかして寝てた?』 「うん。もう爆睡」 『そうか爆発しろ。……なんかいきなり霧が濃くなってさ。晴れるまで帰れそうもないんだわ』 「あー、」そういえば兄貴、今日はバイト5時までか。 「雨降ってないなら帰れるじゃん」 『んー、俺方向音痴だから。お前が迎え来てくれればなんとか帰れんだけど』 「えー……」  ようやく意を決して起き上がり、大きく伸びをする。寝すぎた所為で体ががちがちに強張っていた。 『ちょっとは人の為になれ三年寝太郎』  何故命令形だし。ていうか1日寝坊したくらいでその言い様は無いだろ。頭を掻きながらベッドから降り、眠たい身体を引き摺りながらカーテンを開けた。 「はいはい。じゃあ今から――」 開いた窓の外は真っ白で、真っ暗だった。暗くなった街一面に濃い霧が垂れ込み、1メートル先すら全く見えない。……待て待てよく考えるんだ俺。これ何が落ちてるんだ?  今日落ちた白いもの、白いもの、って何だ。霧? それともこれは、雲?  雲? 「…………、ああ」 『は?』  雲。雲ってことはつまり、そうだつまりそういうことだ。そういうことだったんだ。 「ごめん兄貴、無理」 『は? え、ちょ』  兄貴の声をろくに聞かないまま通話を切る。慌てて発信履歴を開き、かちかちと通話ボタンを連打して耳に当てた。無機質な発信音を数えながら待つ。待っている時間がひどくもどかしい。  
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