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「どうしたの、なんで泣いてるの……?」  マサは腕の中で戸惑いの声を上げ、優しく俺の背中を撫でる。どうしようもなく悲しくて、悔しかった。本当はクリスマスに君の隣で言いたかった台詞なのに。 「好きだ、好きだよ真咲。ずっと側にいて」 「っ、」マサが息をのむのが判った。一度肩がぴくりと反応し、それから再び背中に手が置かれる。疲労した身体から力が抜けていく。俺は座り込みそうになりながら、懸命に言葉を探した。 「ごめん、クリスマスに言おうって思ってたんだけど、だけど駄目なんだ」 「…………柴、」 「クリスマスじゃ駄目なんだよ。ごめん。確証は何処にもないんだけど、やっぱりそれでも駄目なんだ」  マサは俺から優しく身体を離し、俺の前髪を指先でそっと分けた。俺の泣き顔を見てくすくすと笑う。 「変わんないねえ、泣き虫柴」 「っ、っせーよおとこおんなっ」 「あはは。もう根っからの女の子ですー」  少し先すら見えない霧の中で、マサはとてもとても綺麗に笑った。 「これからもずっとよろしくね、柴」 「…………う」  この景色を覚えていなくちゃいけないのに視界が歪む。頭を優しく撫でられながら、花壇の上で懸命に咲いていた花を思い出した。  マサもあの花も先生も生徒も手乗り文鳥も、あの少年も母親も地球上の全てが明日も変わらずそこにいてくれればいいのに。  そう思った。  
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