2/16

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 頭に小石が落ちてきた。 「…………ん?」  学校からの帰り道、信号待ちをしていた俺の頭にこつんと当たったそれは白くて丸い小石。大きさは小指の先ほどで、金魚鉢に敷き詰める石とよく似ている。俺は地面に落ちたそれを拾い上げ、空を仰いだ。  赤と黄色、それから少しの紫を混ぜ合わせたような夕暮れの空。ビルとの境界線がはっきりと浮かび上がっている。信号が赤から青に変わり、同時に車のエンジン音が通り一帯を包み込んだ。一拍遅れて多彩な色をした人の波が押し寄せてくる。  呆然と立ち尽くしていると、すれ違う人や追い越していく人に迷惑そうな視線を向けられた。何処から降ってきたのか判らないままだが、後ろ髪を引かれる思いで歩を進める。  肩を何度もぶつけそうになりながら道の向こう側へ歩く。ええと……ビルの何処かから降ってきた、のだろうか。絶対そうだ。これが漬物石大だったら死んでたなあ、とか悠長なことを考えられるまでは落ち着いた。  角が取れているから壁の部品というわけでも無さそうだし、心配することはない。子供の悪戯だろう。はい確定。 「寒ぃー……」  いつの間にか冬に差し掛かり、外気温は日に日に低くなりつつある。少し前まで暑かったのが嘘のようだ。マフラーを口許までずり上げて足早に歩きながら、これ以上寒くなると登校や下校まで面倒になるな、とぼんやり考えた。  
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加