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男の標的が再び狼に戻る。
だが良かったと安心できるわけじゃない。
目の前の狼を殺したあとに俺を殺さず逃がすなどと甘い考えは恐らく通用しないだろう。
男が口角を吊り上げた。
「さすがにこうなれば貴様もお終いですね。
長い付き合いでしたから別れが少し寂しい気がしますよ。
残念でしたね?
せっかくお仲間を犠牲にして醜い姿に変わってもしぶとく生き残っていたというのにね?」
「…ぐぁ!」
男が狼の腹を蹴り上げる。
俺は自分を助けてくれた狼を助ける事もできず、ただ自分にこれから迫る恐怖に震える事しかできない。
俺は臆病者かもしれないが現実なんて多分こんなもん。
物語の登場人物のように勇敢に助けに入る事などできる筈もない。
狼は先程の蹴りで気絶したようで全く動かなくなった。
「さぁ!終わりだ!!
死ね!!!」
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