第1話 県警本部

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何故世の中は罪で埋もれているのか、考えた事がある。 だが、本当の理由を知ることは俺には出来なかった。 その為せめてもの救いと思い警察となり、少しでも世界を平和にさせたい。 純粋な正義を貫きたい。 そういう心でこの世界に入ったのは一体いつの話しだろうか。 人並みに成果を上げて、運命の悪戯の様に大犯罪者を捉えた事により、一気に警視まで上り詰めてしまった俺には、この世界の治安になどすでに興味を失っていた。 鬱陶しい蝉の鳴き声を聞きながら、ぼさぼさの髪を掻いて、だだっ広い屋上でセブンスターを取り出し、使い捨てライターで火をつける。 ぼやける思考の中、警察に成り立てだった頃の自分の姿が目に浮かぶ。 正義の為に犠牲にした物は余りにも大きく、俺のやる気全てを吸い取るには十分な出来事だった。 だからこそ今の俺が完成した。 休むためにも座る場所を探すと、近くに設置してある所々錆びつき、色のはがれおちた木製の白いベンチを見つけて、その上にどっかりと腰を下ろす。 木の軋む音が聞こえる中、今更体臭が気になり袖先を鼻に近づけると、妙につんとスッパイ臭いがした。 そう言えば、荒んだ俺を必死に支えてくれた妻と子を家に残したまま、もう二日は家に帰っていないな。 そのくせ、張り込みの収穫もまるでない。 まったくいつ帰れるのやら。 多分周りからは、仕事中毒と見られているだろう。
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