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「あの、良かったら…今から観ませんか?一緒に…」
よく考えたらおかしなことだ。ただ僕達は偶然すれ違っただけ、ただそれだけなのに、「今から一緒に映画を観ませんか?」…どう考えてもおかしな話しだが、僕の選択肢は1つだった。
「いいよ、なら…まず君の名前を教えてくれないかな?」
「名前?若槻 美奈…」
若槻美奈…またもや僕の頭に映像が飛び込んで来た。
僕は痛そうに頭を押さえた。映像の中には僕の声と若槻美奈の声が聞こえ、何故か僕は血に染まった包丁を持っていた。
そして映像の中で僕は言った。
「これで、これで…良かったのか…?」
そこで映像は途切れ、気づけば僕は頭を押さえてひざまずいていた。
「ちょっと、ちょっと大丈夫?どうしたの?」
目の前には心配そうな美奈がいた。
「ごめん…今、なんか」
ゆっくりと立ち上がり、美奈は思ったとおりの質問をした。
「あなたは?」
「後藤 哲。初めまして…なのかな?」
その後、彼女も僕と先程と同じ映像を見たのは言うまでもなかった。
僕はそうなることが分かっていたのだ。きっと…彼女自身も‥。
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