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気づいた時、博士は血だらけで僕の目の前に倒れていた。
僕の手は血で染め上げられ、震えていた。
「これで、これで…良かったのか…?」
「良かったのよ‥さあ早く、私達の記憶を消しましょ…私達は出会ってはいけなかったのよ。こんな記憶無くなってしまえばいい…爆弾魔だったって記憶なんか‥嫌よ」
そう、僕達は今日でお別れだ。
施設を爆破して3日目の6月11日、その日は僕達が従業員として働いた丁度3年目だったからだ。
サンプルの効果は正確。マウスにチーズの場所を1年半かけて覚えさせ、サンプルを投与したところ、昨日までのすらすらとした足並みは消え、ただふらふらと小走りに走るだけだった。
しかしそれはマウスだからの話し。人体にどのような影響を及ぼすのかは未だ不明。もしかすると、命を落とす危険さえもある。
でも僕達はそれでも構わなかった。知らなかったとは言え‥あんな最悪な研究の肩を担いでいたのだ。もとより…生きる価値なんて無い。しかも僕は人殺しだ。だからこんな記憶、すぐさま消したい…でも‥でも‥
「最後に一緒に映画を観ないか?」
「うん‥なんて映画?」
「空のむこう」
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