第1章

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「さてさて、コレを買いますか」 彼らはレジへ歩いていこうとした。 「?」 ユウは服の裾を後ろから引っ張られ、後ろへ振り向くと、ユウとは二歳年の離れた妹だった。 目を合わせようとして、そらして、また合わせようとしてそらした。唇を噛んで、何か言いたそうにしている。 妹のこの行動は、何か頼み事や、言いにくいことを、言いたいときによくする行動だ。 「ユイ、何か言いたいことがあるなら、言えばいいんだぞ」 ユウは、母がそうするように、優しく聞いた。 「これも買って?」 何か握った手を前に出して言った。その手の位置はちょうどユウの胸の辺りだ。 ユウは左手を出して、ユイが握っているものを受け取った。 ユウの手のひらには、二つのネックレスがあった。それは、ハートの形をしている。片方は、蒼いガラスか何かで出来ているもので、もうひとつは、金属でできたハートの中身がない、縁取りがされたものだ。 ユウがなぜ二個なのだろうと疑問に思っていると。 「片方はユウのかい?」 笹谷が的を突いた質問をした。 ユイはにっこりと笑って答えた。
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