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三角形の顔から伸びる二本の触覚はゆらゆらと揺れ、両手の鎌を擦り合わせるその姿は祈りを捧げている様にも見えるが、実際は鎌を研ぎ、殺傷力を高めているだけである。
一見すれば、なんでもないような光景だ。
たかが一匹のカマキリ。
虫が嫌いならば悲鳴のひとつもあげるだろうが、五人全員虫が苦手と言うこともあるまい。
仮にそうだとしても、いい図体をした高校生五人が揃ってビビることでもない。
彼らがカマキリ相手に恐怖している理由はもっと根元的なものだ。
そのカマキリは、大きかった。
目測で言えば、その体長は三メートルほど。
分かりやすく言えば、乗用車とほぼ同じ大きさ、といったところか。
当然、そんなカマキリが自然界に存在するわけはなく、それゆえに彼らは驚いているわけだが、目の前の事態は紛れもなく現実である。
時たま、呼吸のためにシュー、という空気の抜けるような音がカマキリの口から洩れるが、そんな呼吸による音すらも、今の学生たちにとっては恐怖の対象であり、一人が上ずった声をあげる。
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