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それが合図になったのか、カマキリは両手の鎌を振り上げて学生たちに襲いかかる。
恐怖で動けない学生たちに、それを避ける術はない。
全員がここまでと目をつぶった瞬間、ガキン、という、金属同士がぶつかり合った時のような音が聞こえた。
恐る恐る彼らのうちの一人が目を開けてみると、そこには彼らよりも少し年上に見える青年がいた。
その青年が、身の丈ほどもありそうな大きな剣を手に、カマキリの攻撃を受け止めていた。
カマキリが力を込めてその大剣を押し退けようとしているが、大剣どころか青年の腕すら動く気配がない。
青年は相当な力自慢のようだ。
「大丈夫か?」
カマキリの攻撃を受け止めながら、青年は学生たちに声をかける。
学生たちは恐怖のあまりしゃべることが出来ないのか、ただコクコクと頷くだけだ。
それでも、きちんと意思表示が出来るだけマシというもの。
それを確認した青年はカマキリの両腕を押し返し、大きくバランスを崩したカマキリを大剣で弾き飛ばす。
昆虫なだけあり、やはりその皮膚は固い。
特に鎌は。
両断するつもりで大剣を振るったのだが、それは固い皮膚に阻まれ、少し傷をつけて弾き飛ばすだけに留まった。
当然、大したダメージは与えられない。
しかし、カマキリの方は青年を警戒しているのか、羽を広げて威嚇はしているものの、先ほどの様に飛びかかってくる気配はない。
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