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序章:遊撃騎士
眩しい青空の下に、鋼が鋼を弾く金属音が響く。
そこには、布切れを巻きつけて顔を隠し、後ろ手を地面に座りこむ男の姿。
そして、男の鼻先に向け、長剣を突きつける若い女性の姿があった。
赤褐色の長髪を後ろに束ね、残した前髪から覗く、同じく赤褐色の瞳が鋭い視線を男に向けている。
凛とした整った顔立ちが、女性に冷酷な雰囲気を漂わせていた。
「い、いぃ命だけは」
怯えて声を震わせる男の命乞いに、女性は何も答えず、表情すら変えぬままに長剣を振りかざすと、
「助け……ッ!」
なすすべもなく目を見開くだけの男へと、躊躇なく長剣を振り下ろした。
……が、再び鼻先で止まる切っ先。
その切っ先でツンと鼻を突かれると、男は恐怖のあまり気を失い、バタリと頭から仰向けに倒れこんだ。
「ふん……、だらしのない悪党だな」
その姿を確認した女性は軽く空を斬ると、腰に掛けた鞘へと静かに長剣を納めた。
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