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†††††
外光──いや、世の理全てを遮断した暗い部屋に唯一光を点すディスプレイ。
カチッ……カチッ…
無情に響くクリック音だけが静かに生命反応を感じさせる。
モニターに表示されたサイトには文字が表示されていた。
────────────
これが最後の(逆)オークションです。
ここに200万あります…。
■貴方はこの金額で人を殺せますか?
■YES
ハイ、ヨロコンデー(^・^)
■NO
安スギ!上ゲロ(・д・)ゴラァ
────────────
「……」
カチッ…
マウスポインタを操作していた男は瞳を曇らせることなく、“YES”をクリックする。
彼には迷いはなかった…。
彼にとってこのふざけた文章をクリックした《後》のことなど、単なる自分を養うための《仕事》にしか過ぎない。
それにしても今の世の中は便利だ。
ネットワークという蜘蛛の糸を通じてこう簡単にも餌が引っ掛かるのだから。
────────────
オメデトウ
(^o^)/ヤターヨ 交渉成立しました。
シリョウハ自動的にダウンロードシマス
楽しくマターリ殺っちまってください。
────────────
これで糸に餌はかかった。
後はゆっくり食スだけ…。
男は表示されいく資料を見つめながら呟く。
「ハイハイ、マターリ…」
首を傾けた男の顔が、モニターの光で右半分だけ照らし出される。
「マターリとね…」
表情を変えることのない男の右半側に口から目にかけて彫られた足長の《蜘蛛》のタトゥー。
ギラリ、と複眼が光に反射する。
まるでその《蜘蛛》は餌を求めるように……。
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