21人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………ぃさん、兄さんッ!!
起きて!!兄さん!」
パッと、景色が変わる。
急すぎて、眩暈を覚えるほどに周りが明るかった。
「雪………男……?」
雪男の声に目が覚める。
昼間………?いや、夜か。
部屋の明かりが強すぎただけだ。
少し経ってから、見ていた夢も脳裏によみがえってきた。
「…………クロが、兄さんがうなされてるって教えてくれたんだよ」
『りんー!だいじょうぶか…?』
掛け布団の上にはクロが心配そうにこっちを見ていた
「兄さん………、本当大丈夫?」
「…………っさわんなッ!!」
雪男の差し出された手を瞬時に払った燐。
一息おいて我に返る。
「ご、ごめん雪男………」
その行為に雪男も驚いている様子だったが、直ぐに「大丈夫」と返した。
それからも燐の顔色は一向に晴れずにいた。
「どうしたの?」
こんな兄を見たのは初めてかもしれない。
だからこそ、自分が兄を支えなきゃならない。
だが、雪男の問いには答えず黙ったままの燐。
しばらく解答を待っては見たものの、それといった答えは返ってきそうになかった。
だが、燐はその代わりに雪男の胸元に顔をうずめる。
少しだけ、このままで居させてくれ……………
その思いが伝わったのか、雪男も何も言わなくなった。
ただ、腕を後ろに回し、優しく包み込んでくれた。
雪男も察せる程に、震えている自分がいたから。
こんなに震えた兄を見たのは始めてのことだった。
きっと、今見た夢に自分が出て来たんだろう。
そして、その自分が兄を不安に陥らせる様なことを言ったに違いない。
だからこそ、これ以上不安にさせないためにも…………
守らなきゃならない。
夢に出て来た自分とは違うということを証明させるために………。
雪男は燐の頭をそっと撫でる。
すると、燐は顔を上げた。
今にも泣きそうな顔をして……
「兄さん、もう一人で抱え込まないで?
僕がずっと傍にいるから。」
燐は照れたのか、頬を赤く染めてもう一度雪男の胸元に顔をうずめた。
そして、一言「ありがとっ…」と呟く。
その言葉も雪男にちゃんと届いたのか、雪男は燐の頭を再度撫でる。
「兄さん、一緒に寝よう?」
微笑みを浮かべた雪男の言葉に、
兄も微笑み返した。
最初のコメントを投稿しよう!