運命の悪戯

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「あの、呼び止めるみたいな事して、ごめんなさい」 「えっ」 「俺、希が悲しむ顔が見たくないんですよ」 それだけで、何がいいたいのか理解出来た。 「そうですよね」 あの時、美愛に「だめ!」って言ってたら。間違いなく泣き喚いてたぁ。希ちゃんもきっと。 「あのさぁ。女性って、やっぱ。こういうの気になるんかな…」 「え…。あぁ~」 周りの視線を感じてたの私だけじゃ、なかったんだぁ… どう説明したらいいのか、答えに詰まって返事が出来ないでいる。 「やっぱ。嫁がくるべきだったかなぁ…」 なんか、寂しそう… 「た、たまには、お父さんが来てもいいと思う。別に母親が!って決まってるわけじゃないしぃ」 「…ありがとう」 「あ、いえ」 ありがとう。だって きゃは。 🎵🎵🎵… 携帯に名前が。 ❤前原 夏希❤ 夏希だぁ。忘れてたぁ。 「も、もしもし…」 「ちょっと、隣の人。誰?? 麻里愛の知り合い??」 受話器から もれそうな大きな声が。 隣に聞こえそうで、距離を開けた。 「うん。知り合いになるんかなぁ~」 「いつ~?何処で?」 「落ち着いて。後で説明するからぁ」 「…ほんと?」 「ほんと。後でね」そういうと電話が切れた。 あー、ビックリしたぁ。 「時間大丈夫?」 「あ、うん」 一瞬、寒気がぁ。まさかと思い、後ろを恐る恐る。 「こんにちわ」 夏希… 前原 夏希(24)息子…海斗(4) 訳あってシングルマザー歴四年になる。 見た目、ギャル。 旦那と別れた後、実家に出戻り。 真里愛とは対照的な暮らしをしてる。 居ても立ってもいられなかったのか、侵入してきた。 「こ、こんにちわ」 ほらぁ、慌ててるやん。 「同じチューリップ組の前原海斗の母ですぅ。よろしくお願いします」 口調から態度から、夏希が佐久間さんに気がある。って一瞬でわかったぁ。 夏希の自己紹介が終わった頃、帰りの音楽が流れた。 「ママ、帰ろう」 「パパ、帰ろう」 ギュッ。…なに? 「真里愛、佐久間さんと一緒に?」 「あ、うん」 「うそ~」 「美愛ちゃんのママも行こう」 「うん。すぐ行くね…」 「真里愛、いいの?」 「いいも悪いも…」 「ママ、先帰ろう~」 美愛と希、麻里愛の腕を引っ張って急かす。 「…夏希。詳しい話は後で電話するね」 「待ってるからね」 園内、痛い視線をたくさん浴びながら幼稚園を後にした。
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