5人が本棚に入れています
本棚に追加
どうして
手を、離してしまったんだろう
彼女の涙に濡れた
絶望を宿した漆黒の瞳が
焼き付いて離れない
もう
俺に悩みを打ち明ける事も
俺を頼る事も
もう声を聞く事も
出来なくなってしまった
俺が、離してしまったから
彼女はもう、あいつから
離れられないだろう
俺しか、いなかったのに
俺にしか、出来なかったのに
泣いて嫌がっても
壊してしまえばよかった
それでも
あの日に戻れるとしても
俺に彼女を壊す事は
きっと出来ないだろう
こんなに人を好きになったのは
初めてだったから
「…かっこわる」
煙を肺に入れて空を仰いだ
頬に伝う汁は
10月の風を受けて
酷く 冷たかった
最初のコメントを投稿しよう!