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「それにしても、10分以上遅刻するだなんて…こりゃお仕置きしないとだね…ふふ」
「ちょ、しのぱ!?目がマジだよう!?;;」
「いーのいーの、だって玲音だもの(笑)(笑)」
「もう、相変わらずいじわるなんだから…」
そんな会話を交わした直後だった。
初めて、声が聞こえたのは。
―゙はの。゙
「(え……?)」
相変わらずの喧騒の中だけれど、はっきりとわたしの名前を呼ぶ声がした。
透き通る様な、とても綺麗な女の子の声。
知り合いに呼ばれたのかと辺りを見回してみるが、声の主は何処にもいない。
しきりに辺りを気にしていると、わたしの様子を伺うしのぱと目が合った。
「どしたん?」
「今、誰かに呼ばれた気がしたの…」
「へ?…玲音、…はまだ来てないよね」
「でも、ほんとに聞こえたんだよ」
「…ふむ」
しのぱは顎に手をあて、考え始めた。
彼もわたしと同じように辺りを見回しているが、特に変わった様子は無いと感じたようだ。
少し眉を下げながら、困ったような表情をわたしに向ける。
「…空耳かなんかじゃない?」
「う、うん……そう、だよね」
゙はの。゙
「―!!」
さっきよりもクリアな響き。
やっぱり空耳なんかじゃなかった。
゙良かった、私の声が聞こえるのね゙
゙もう、知らんぷりなんて酷いわ。゙
゙突然私に呼ばれて、驚いているのはわかるけど…゙
「はのちゃん…?」
「……玲音、ちゃん」
少し短めの黒髪。
目付きが悪い、と彼女自身言っているジト目のグレーの瞳。
黒のシンプルなタイトワンピース、そしてその上に黒のロングジャケット。
黒のオーバーニーソックスを左足だけ履いて、わたしの前に佇む少女の姿。
撃剣士の『玲音』ちゃんが、心配そうにわたしを見ていた。
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