2.わたしたち と 彼女の世界

6/16
前へ
/27ページ
次へ
「どうかしたのか?」 「…ううん、なんでも…ないよ。ちょっとぼーっとしちゃってたみたい」 わたしは、苦笑を交えてそんな言葉を返す。さっきの声の事については、誤魔化しておくことにした。彼女にまで、余計な心配を掛けたくはなかったから。 それでもしのぱは、わたしの様子を気にしていたみたいだったけれど。 玲音ちゃんはじっ、とわたしの顔色を伺った後、安心したようににかっと笑った。 「ん、そっか。それならいいんだけどさ…二人とも、遅れてごめんな!」 「だいじょぶだよ!気にしないで^^*」 「はのが許してもボクは絶対にゆるさない」 「なっ」 「このボクを毎度毎度待たせて…どんな惨めな目にあわせてやろうかな…きひっ」 「や、やめろその笑い方!!こわいから!!シャレになってないから!!」 「しのぱ…あんまり意地悪しちゃ可哀想だってば;」 しのぱが悪い顔を見せると、玲音ちゃんは少し青ざめながら後退りをする(多分本気で怯えてるんだと思う)。 いつものやりとり。 わたしはそんな二人の様子を見てはくすりと笑う。 だけど、その時のわたしはあまり楽しそうな顔はしていなかっただろうな。 ゙貴女には面白いお友達がいるのね゙ ゙これからジョブエクステンドなの?頑張ってね、はの゙ ゙上手くいくように祈ってるわ゙ だってわたしの頭の中で、未だ知らない女の子の声がずっと響いていたから。 「ふむ…案外早く終わったね」 「だな。今日ははのちゃんの勘がすげー冴えてたからな!全然迷わないでボスに辿り着いちゃうし」 「えへへ。なんか今日は調子いいみたいなの」 クエストに出発してから10分もしないうちに、わたしたちはタウンへと帰ってきた。 今回のジョブエクステンドのクリア条件は、ダンジョンの最深部にいるボスの討伐だった。 ダンジョンの内部は行き止まりがあったり、いたるところにトラップがあったりするんだけれど、今日は一切迷うことなく、ボスの元へたどり着けた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加