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それだけ答えると、「お湯だけ沸かしてくるね」と言い残し、再び恵莉乃はカウンターへと戻っていった。
初木はその後ろ姿を見送った後、本来の用件を思い出したのか、少し大きめの声でカウンターにいる恵莉乃へと呼びかける。
「そっか…そうだ、エリー」
「なーに、なお?」
「今日の夜。バイトが終わってから、暇?」
「ん、暇だよー。あ、もしかして
デートのお誘いかな?」
「からかわないでよ。そういう事じゃなくて」
「冗談だってばー。何のご用かな?」
「ええとね……ん」
そんな他愛の無い会話をしつつ、恵莉乃がトレーを持ち、初木の席へと戻ってくる。初木は彼女に目を向け、話を切り出そうとした。しかし、初木はトレーを見るなり沈黙してしまった。
視線の先には、ヘーゼルナッツ入りのキャラメルドーナツとコーヒー。
「頼んだのと違うんだけど」
「ごめんねー、オールドファッションは売り切れちゃったみたいなの」
「エリー…僕が甘すぎるドーナツ苦手だって事知って…」
「知ってるよ♪だから、紅茶じゃなくてコーヒーにしといたよ。なおって、キリマンジャロ好きだったよね?」
「まあ…そうだけど…。でも、いいか。これはこれで美味しそうだし」
初木は、いただきますと一言だけ言った後にドーナツにかじりついた。
恵莉乃は初木の向かいの席に座ると、彼の顔色を伺いつつ再び話を戻した。
「それで?さっきの話の続きは?」
「むぐ、そうそう。エリー、このメール、見た?」
「…え?…………これって…」
初木が恵莉乃に見せたのは、彼が数刻前に受信したメール。
その本文に、恵莉乃の目が釘付けになる。
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