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初木と恵莉乃宛に同時に送信された一通のメール。
送信者は、二人がよく知る人物だった。
あのネットゲームで、二人と共に戦う大切な仲間。
黒髪を揺らし、身の丈以上の長さの剣を振るう姿。
少々皮肉屋で、負けず嫌いだが、根は仲間思いの男勝りな少女。
From:れお
To:ヱリー
Subject:無題
******
またあのメールが来たよ。
多分二人にも来てると思う。
何が起こるかわからないけど、俺は先に行ってるから。
やっぱさ、これって俺たちに対しての挑戦なんじゃない?
なんて、ね。
******
初木は無言でコーヒーを口に含む。恵莉乃は少し何かを考えているのか暫し目を伏せた。
ああ、またか。
僕達しか知らない、異変。
『The World』にログインした際頻繁に届いている、送り主不明のメール。
あの時誰も居ないフィールドで、確かに聞こえた声。
「エリー」
「…うん、分かってるよ、なお。行くんだね?」
「勿論」
恵莉乃が伏せていた目を上げると初木を見た。そしてどこが決意の込められた声でそう問いかける。
初木はどこが楽しそうな表情を浮かべながら目を細めゆっくりと頷く。
「(そう、僕達にはもう一つの世界があるんだ。)」
『The World』―。
此処で、再び繰り広げられる物語。
実際に存在することの無い世界だけれど、彼らにとっては大切な唯一つの世界。
此処から、全てが、始まる。
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