2/12
前へ
/49ページ
次へ
真っ赤な炎だった。 それは一瞬にして三メートル程も背丈がある生物を包み込む。 人と類似するその生物は、腕を振り回し抵抗するも、苦しさに悲鳴を上げたため瞬く間に肺をも焼かれた。 焼けた喉では断末魔の叫びさえ上げれはしない。 そのまま勢い良く地面に倒れこむと、その衝撃で体が軽く弾み、同時に大量の煤煙が空(くう)を舞った。 常人ならば数秒もしないうちに、胃の中身をきれいにぶちまけているであろうこの現場で、たった一人青年が最後を見届ける。 「まいどあり」 そうつぶやくと、まだ火も残り、異臭撒き散らす炭素の塊へ近寄った。 炭化した額からは真っ直ぐに伸びる一本の角。 それを掴むやいなや唸りをあげ引っ張る。 しかし、思いのほか頑丈なようでびくともしない。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加