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大きなため息をひとつ。
やれやれと言ったように頭をかくと、少し汗ばんだ首筋にへばり付く、やや長い髪を鬱陶しそうに払い除けた。
その髪は、瞳と同様に青年の炎を象徴するような綺麗な赤である。
「髪、切ろうかな……」
気だるそうに襟足をつまんで、少し悩んだ素振りを見せたが、それも一時。
すぐにまた炭素の塊に視線を戻し、顔を強張らせて近寄っていく。
この時すでに、あまりの不謹慎さに自分でも気が引けていたのだろう。
今度はより力を入れるため、角の根元、つまり額に足を掛けたのだ。
そして、一呼吸。
角をしっかりと握り直し、力を込めた直後のこと。
弱々しいため息と、情けない程微かな声を上げ、お尻をさする青年の姿があった。
ささやかながらも、バチが当たったと言うべきか。
力まかせに角を引き抜いたために、勢い余って大きく尻餅をついたのだった。
少しの間そうしていたが、ふと何か思い出したように慌てて周囲を見渡し、青年の背から少しばかり離れたところに視線を止める。
面倒臭がりな性格なのか、座った姿勢からそれを取ろうと、仰向けに寝転がって手を伸ばした。
手の先には、今し方引き抜いた一メートルもあろうかと言う大角と、緑色の薄汚れた素足。
「ん……? ちょっ!!」
全てを把握した時、すでに頭上へ巨大な斧が迫っていた。
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