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この辺りは比較的硬い岩盤地帯。 それにも拘わらず、青年の頭部へ振り下ろされた斧は、手元まで深く地面にめり込んでいた。 「他にも鬼がいたのかよ……。後ろから卑怯なマネしやがって」 体勢を立て直しつつ、青年は鬼と呼ぶ者へ悪態をつく。 間一髪で避けることはできたが、それは偶然にも等しく、今あの岩盤のように粉砕されていてもおかしくはなかった。 「戦いに卑怯なんてコトバあるのかよ」 砂埃が風に流されるとその顔が露わになる。 長く縮れた髪から覗く、獣のような鋭い眼孔は爛々と輝き、ゆるんだ口元からは並びの悪い歯と、ひときわ大きな犬歯。 そして、青年に焼かれた生物同様に、額からは角が生えている。 ただし、今回は短い捻れた角が二本だ。 背は青年の頭一つ超える程度だが、全身に纏う筋肉が更に大きな印象を与える。 両手にそれぞれ携えている斧は切れ味悪そうに鈍く光り、ひとつが大人の脚程もある。 どちらかと言えば、斬撃と言うより重さを利用した打撃に近いのだろう。 砕かれた岩盤にも納得できる。
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