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青年は怒り露わに強く右の拳を握る。
「後悔すんぜ?」
指先が手の平に食い込む程握られると同時に、指の間から小さく噴き出す炎。
勢いを増すと瞬く間に腕をも包み込むまでになり、それを鬼に向け一気に疾(はし)らせた。
避ける間もなくぶつけられた炎は、鬼を媒体に更に激しく燃え上がる。
やがて松明と化した鬼は地面へ倒れ込み、肌や肉の焼けた臭いが周囲へただよう。
それでも青年の顔は依然と険しく、まだ何かあることを伺わせ、また一歩と距離を置いた。
これは仮に突然切り込まれても十分に避けられる距離。
尚且つ反撃に最も適した距離でもある。
予想は大方当たっていた。
揺らめく炎の中、鬼はゆっくりと立ち上がり、おたけびと共に炎をかき消す。
至る所から焼けた表皮が剥がれ落ち、それを泥でも落とすように手で払っていく。
楽しそうに笑う口元は、自然と綺麗に剥がれ落ちていた。
「なんだ、不意打ちしようと思ったんだがバレてたか。くくっ、余計なダメージくらっちまったなぁ……。さぁ、それじゃあ続きを始めようか!!」
強靭な脚から踏み出された一歩は大きく、重厚感の有る肉体からは想像できない俊敏さで迫る。
だが、それすら想定の範囲内であり、むしろ楽しむように青年は待ち構えた。
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