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どちらにせよこの中で1番になる気で臨ばなければ受かるわけがない。
ほとんどの選手が180cmはあるであろう身長にガッチリした体格。
中には外人選手もいた。身長167cmの燿輔は明らかに浮いていた。
しかし,燿輔は今までになく興奮していた。
高校時代もこんな人間に囲まれたことがなかった。持ち味である逆境魂が沸き立っていた。
テストは走塁,守備,バッティングの順で行なわれた。
50メートル走5秒9で1位,遠投120メートルで4位,アメリカンノックでは無難に守備をこなした。
「さすが社が呼んだだけある。体格を感じさせない選手だ」
照屋をはじめ,コーチ陣の目は一際小さい燿輔に集まった。
「最後はバッティングだ!ピッチャーと野手に別れて3打席勝負をしてもらう」
燿輔はこの日のために毎日200本の素振りとティーバッティングにいそしんできた。
「次16番波多野!」
「はい!」
相手は外人の左投手。球速は145kmぐらいだろうか。燿輔が今までに見てきた左投手で1番早かった。
投球練習で凄まじい音が響いている。
「OK!」
投球練習が終わり,燿輔が左打席に入る。
「チイサイヤツダナ」
大きく振りかぶり外人投手が1投目を投げる。
ドン!!!
「ストライク!!」
「速いっ..!」
インコースの球に全く手が出なかった。
3年のブランクがかなり大きかった。
2球目ー
ドン!!!
「ストライクツー!!」
143kmのストレート。
結局3球三振。燿輔は1打席目で全く自信をなくしていた。
2打席目は変化球をかろうじて当ててサードフライ。
追い込まれた燿輔は開きなおった。
「ストレートだ。インコースに来たらフルスイングしてやる」
外人投手は2打席を抑えニヤニヤしている。
「絶対負けるわけにはいかないんだっ...!」
3打席目の初球。
アウトコースの変化球でボール。
このボールから一気にスリーボール。
しかし,燿輔は待っていた。自分の1番自信のあるインコースを。
スリーボールからの4球目。
燿輔の待っていたインコースのストレート。
懐までボールを呼び込み肘をたたんで振りきった。
カーーーーン!!!
乾いた打球音とともに白球が空を舞う。
ドン!
打球はポールに直撃。判定はホームランになった。
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