忘れていたもの

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草野球の試合が終わった1週間後,社からのメールが入った。 「今週の日曜〇〇中学のグラウンドでトレーニングせぇへん?返事まっとるで(^w^)」 燿輔はすぐに参加のメールを返信した。 するとそこに山下がやってきた。 「波多野,先週はありがとうなぁ。しかし,もったいないなぁ。やっぱり甲子園球児はモノが違うなぁ」 「もったいない...か」 一週間後― 「おはよーさん」 社は一足早くアップを開始していた。 「早いな」 「ワクワクしてなぁ。はよ目覚めてん」 社も久しぶりに燿輔とキャッチボールできることに興奮していた。 「ん?」 燿輔の目に見知らぬ人が映った。 「あーこの人はトレーナーの北川はん。わいらと二つくらいしか離れてへんから気さくに話しかけて大丈夫やで(笑)」 燿輔は苦笑いで北川に会釈した。 「どうも。福岡レジェンズのトレーナーやってます。北川です。僕も岡山出身なんでよろしく」 「よろしくお願いします」 「社から聞いてるよ。面白い選手がいるってね」 「え?」 燿輔は社を見た。 「ははっ。まぁ頑張ろや。ほな走ろか」 こうして社との自主トレーニングが始まった。 さすがにトレーナーをつけた社との自主トレは本格的だった。 キャッチャボールもラグビーボールを使ったキャッチボールから始まり,筋力トレーニングも体幹を中心としたアスリートらしいトレーニングだった。 燿輔も共にメニューを難無くこなし北川も舌を巻くほどだった。 「さすがやな」 日はすっかり暮れ二人はストレッチをしていた。 「いやいや,でもとりあえず楽しかったよ。ありがとう」 「おう」 社がまた思いつめたような表情に変わる。 「燿輔...」 「ん?」 少し静寂が続いた後ふたたび社が切りだした。 「燿輔おまえもプロに来い」 「えっ..?」 燿輔は耳を疑った。 「いや,もぅ野球をやめたし」 「俺のいた福岡に来い!おまえならやれる!」 燿輔の頭に1番に母親のことが頭に浮かんだ。 「おばさんのことか?」 「...うん」 「任せろ。俺もサポートするし球団もお金をなかなか持ってる球団だ。最悪おばさんを福岡に呼べばいい」 燿輔は下を向いて考えふけていた。 社は燿輔の肩をつかみ言った。 「いいか。よく聞け。おまえほどの才能なら絶対やっていける!今のご時世,才能はあっても活躍する場さえ与えられへん。それをサポートするのが友人のワイであり。独立リーグの立ち上げられた目的や」
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