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「ちょっと、狙撃されてるわよ!?」
「そりゃあねー。毎年殺人やってるから、毎回警察も躍起になって追い掛けてくるんだよね」
まあ、捕まるつもりなんてないけど、と呟くと、屋根の上を走りだした。
銃声が追い掛けてくる。
踊るように軽やかに、屋根から屋根へと飛び移っていく。
その脚力に感嘆しながら、満月の光に照らされた彼の顔を見つめる。
少しだけ真剣味を帯びた横顔に、心臓がどくんっと脈打った。
(なにを考えてるのよ、わたし。オルゴールの分際で……)
だいたい、この人は怪盗で、殺人鬼なんだから。
顔を見られなくてよかった。
きっといま、わたしの顔は赤くなっている。
再び人の身になって……そのことだけは、不便だと思った。
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