ヴォルール・ハロウィンとオルゴール

7/24

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
こくりとうなずくと、さらに続けた。 「嫌~な金持ちにして、珍品コレクター。それも、裏オークションの常連ときた。彼の家族も共犯。一家そろって極悪人さ」 「だから……殺したの?」 「一人だけだよ。 それにしてもさ、きみに人化の術をかけてこの牢屋に閉じ込めたんだよ。恨まないのかい?」 「……」 恨みなど……とうの昔に捨て去った。 「人は、なにかを間違えるわ。そうして、自分自身を傷つける。……だけど、」 少年の表情は動かない。 無表情のまま、血に染まった自らの手を眺めている。 いつか見たことのある、氷の瞳とはまた違う、からっぽの瞳。 「わたしは人を、いとおしいと思うわ。笑って、泣いて、喜んで、悲しんで、怒って、恨んで、裏切って、でも、愛して。そんな人間を」 「詭弁だよ」 細められた瞳に、冷たい炎が宿った。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加