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「人間なんて、汚い生き物だよ」
「そんなこと……」
「僕はね」
ぞくり、と寒気が走った。黒い瞳の中。人の域を超えた狂気が、静かに激しく、青い炎のように揺らめいている。
冷たく暗い空間は、まるでここが少年の舞台であるかのように闇を内包した空気に満ちていた。
「人を殺さないと狂いそうなんだ。だから、このハロウィンの日だけ、怪盗という名の殺人鬼になる」
「……!」
「そういう風に生まれたモノのことなんて、きみには、わからないだろうね」
少年は静かに笑った。
とても淋しい、笑顔だった。
ハロウィンの喧騒が、遠く聞こえた。たくさんの、笑い声。
「あ――」
口を開こうとした、そのとき。
サイレンの音がけたたましく鳴り響き、窓の向こうに赤い光がちらちら見えた。
「あらま。もう警察が来ちゃったよ。まったく……行こうか」
「にゃっ!?」
少年はするりと近づいてくると、わたしを抱えあげた。お姫様だっこというやつだろうか?
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