神様の能力

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“憑依”  ──…ぶわぁっ。  俺の意識が明坂の意識に潜り込む寸前で掻き消されるように四散する。  たまにいる、隠したい過去や、トラウマなどを抱えた人に現れる現象に似ていた。心に厚い壁を作って他人の介入を拒絶する、そういった拒否反応。でも今回は違うところがひとつだけあった。それは俺の意識まで消し飛んだということ。それは今まで一度もなかったことだ。 「(……まあいいか。もう一回)」  俺は少し違和感を感じていたが、たいした問題ではないと思ってもう一度意識を飛ばす。これまでも複数回の憑依で入れることはあった。だから明坂にも入れるはずだ。そう思った。 “憑依!”  意識が圧迫されるような感覚。間違いない。憑依に成功したんだ。  俺の意識が明坂の中に入る。奴の心の中、それが淡い光を放って集合している。……でかいな。やっぱり頭のいいやつの精神力は心から来ているらしい。こいつの心は通常の数十倍、いや、下手をすればそれ以上かもしれない。とにかく、尋常ではない大きさだった。  俺はその球体に手を当てる。すると、ずずずと粘性のある液体に突っ込んだかのように手が入っていく。  手、腕、肩、と来て、とうとう頭が入った瞬間。  俺の身体が拒絶反応を示した。  今度は精神の四散だけでは済まない。俺の身体本体にも及ぶ拒絶反応。  俺は、何故こいつに憑依出来ないのかわかった。  こいつは思考能力が他人よりも優れている。優れすぎている。  人間では考えられない情報量を、たった一人で処理し、記憶として心に留める。だからあれだけの大きさの心になってしまっていたのだ。  俺の頭がその心に堪えられないと察知し、憑依の的から外していた。『反射』というやつだ。  奴の心に、一瞬だが見えたものがある。それは一秒にも満たない時間だったが、俺の頭がパンクするのには十分だった。  見えたのは『世界』。  情報と情報が重なり、一つの大きな世界を生み出していた。  俺は意識を失った。  一度に過多の情報を受け取り、意識を保つことが出来なくなったのだ。
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