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「おおすみ」と「しらね」の2隻からそれぞれ1艇ずつ降ろされた内科艇(ボート)にはそれぞれ使節団の代表者と艦隊の司令が乗っていた。
さほど荒れていない海を行くこと数分。眼前に駆逐艦の細く長い横っ腹が見えてきた。
スピードを落として近づき艦上からの身振り手ぶりで横ずけするとラッタル(はしご)が降ろされた。
「では私が先に」
司令がそう言って慣れた様子でラッタルを駆け上る。
次いで使節団の代表者である沢田隼人補佐官が、サブマシンガンを持ち黒いタクティカルスーツを着た隊員が数名続いた。
短いラッタルを登るとそこには古めかしい単発式のライフル銃を持った水兵たちと士官らしき口ヒゲを生やした男がいた。
「我々は日本国の使節団です。言葉は分かりますか?」
隼人が問いかける。
すると、士官が訝しげな顔をして
「ニホンコク?聞いたコトがないな?」
どうやら言葉は通じるようだ。
「そうだろうと思います。申し送れました。日本国にて首相補佐官をしております沢田隼人です」
「日本国海上自衛隊第3護衛艦隊司令の速水実之(はやみさねゆき)海将補と申します。後ろは部下たちです」
司令も自己紹介し、後ろ手に隊員たちを紹介した。
「・・・・・私は副長のダニエル・マッカラン中佐だ。海将補というのは?」
ややあって士官が口を開いた。
「分かりやすく言うならば海軍少将です」
「!?しっ失礼しました!」
そう言ってマッカラン中佐は姿勢を正し敬礼した。
「我々はあなた方と争う気はありません。とりあえず話し合いがしがしたいのでその為の場をお借りしたいのですが.....」
横から隼人が口をいれた。
「はっ、そういうコトならどうぞこちらに!」
少将という言葉に気圧されたのか中佐は先程とはうって変わって丁寧な口調で艦内へと歩みを進めた。
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