新大陸発見

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2日 ターボファンエンジン特有の爆音を響かせ1機の飛行機が飛んでいく。 グレーにペイントされた機体には日の丸が描かれている。 飛行機の名は「P-1」2012年から調達が始まったばかりの最新鋭の哨戒機だ。 飛んでいるのは日本海だった場所。 今は発見された新大陸とを挟む海だ。 任務は新大陸を写真撮影してくることだ。 新大陸までは3000km、8000kmの航続距離を持つP-1には余裕の距離だ。 機内では13名のクルーが忙しく働いている。 「機長、後数分で新大陸です」 「分かった、操縦を私に」 「了解。ユーハブコントロール」 「アイハブコントロール」 とパイロットお決まりのセリフを言ったのは今年でパイロット歴8年のベテラン、谷崎啓裕一等空尉だ。 時間は朝の11時、空は曇っていて風も強い。 機内には緊張感が溢れている。 何しろ自衛隊機が他国の上空、それも国交も何も結ばれていない空を始めて飛行するのだ。 当然のことだが撃墜されても文句は言えないし、後々に禍根を残すこともありえる。 緊張するなというのが無理な話だ。 それでも写真を撮るのは日本の為なのだ。 大陸の上空にさし掛かった所で谷崎は高度を落としキャビンの隊員に撮影を命じた。 20分程の撮影を終えて帰投しようとした時だ 「機長!前方6000に機影2!!」 「なぜもっと早く気づかなかった!!」 「電波状態が悪く発見が遅れました!」 レーダーマンの報告に内心で舌打ちしながら操縦桿を目一杯手前に引き、高度を上げて機首を日本に向ける。そしてスロットルをふかして速度を上げ、撤退したのだった。
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