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「・・・・・・」
1人の少女が息をのんだ。
えんじ色の飛行服を着て、帽子を被りグローブを身につけている。
髪はアナトリア連邦には珍しい鮮やかな金髪、瞳の色は空のような青だ。
彼女の眼下には果てしない農耕地が広がっている。
『伍長!遅れているぞ!!』
前方を飛ぶフリードリヒ・クランツ曹長の無線機越しの叱咤で我にかえる。
彼女の名はハンナ・グラス伍長。
アナトリア連邦空軍の軍人だ。
現在2人は新型戦闘機の空輸中だ。
乗っている機体には3本の矢と盾をあしらったマークが描かれている。
機首は細く液冷エンジンを積んでいることが分かる。
翼も胴体も薄くスピードを重視した設計が見れる。
機首には20mmの機関砲がV型エンジンの中心に収まり、翼の付け根に程近い場所には13mm機銃がそれぞれ1丁装備されている。
彼女はこの機体が自分の物になることに喜びつつクランツ曹長の機体から視線をずらす。
するとそこに1機の見なれ無い飛行機を見つけた。
『曹長!前方に見なれ無い飛行機が!!』
『ん?本当だ・・・あれは我が軍の航空機ではないな・・・』
『いい機会です!せっかく弾を積んでるんです、追跡しましょう!!』
そう言って曹長の返事も聞かず速度を上げて不明機へと迫っていった。
数分後。
7000mまで迫った所で彼女は違和感を覚える。
『そ、曹長...プロペラがありません!」
『あぁ、俺も今気づいた所だ。しかもなんだあのデカさは?化けもんか!?』
『あっ!!機首を反転させてます!』
彼女が言うやいなや不明機は2人の乗る戦闘機よりも速い速度で東に去っていった。
その後、目的地である首都近郊のダオス空軍基地に着いた2人は独断行動の減俸と不明機についての報告を求められた。
これが新大陸と日本のファーストコンタクトだった。
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