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十二月・・・
街はクリスマスが近いこともあって木々や看板は無理矢理イルミネーションなどで飾られサンタの格好をさせられた人形が恥ずかしがることなく店先に立たされている。
子供達は親と一緒にはしゃぎ数日後訪れるクリスマスに胸踊らせていた。
恋人達は互いの手と手を握り合い、その愛情を確か合っていた。
そんな賑やかなムードに街は包まれていた。
そんな街から少し離れた小さな公園のベンチに一人、頭を抱えうつむきながら静に深呼吸し呼吸を整える青年がいた。
彼の名は安倍燎治、本作の主人公であり、かの有名な安倍晴明の子孫にして次期陰陽道正統後継者の候補の一人である。
燎治「クソッ」
燎治はうつむいたまま小さな声でいった。
吐く息は白く、それはまるで体から抜け出る魂のようにゆっくり揺らめきながら宙を舞った。
乾いた風が容赦なく燎治へと吹くが、不思議と寒くない・・・
いやそれどころか逆に体は熱を帯びている。
?「あっ!!いた!!」
声のする方へゆっくりと顔を向けると、そこにはブレザーの制服にエプロンをつけた姿の女子高生がいた。
燎治「なんだ、姫深乃(キミノ)かよ」
姫深乃は手を口元に当ていかにも寒そうにしながら燎治の前までやってきた。
「なんか用か?」
燎治はゆっくり、なおかつトゲのある言い方をした。
「あのね、こっちは心配してるだから」
燎治はハァ~とため息をつくと
「俺をいくつだと思ってんだよ!てか妹に心配される俺の身にもなれよ!」
そう言うと燎治はベンチから立ち上がり公園の出口へと歩きだした。
姫深乃は後を追うよに歩きだし眉間にしわを寄せて困ったなぁ~という顔をしながら
「その起伏の激しい性格を直さないとこの先、一生キツいよ」
燎治はその「一生」と言う言葉に過敏に反応し足を止め振り返る。
「だ・か・ら!俺は後継者になる気もないし陰陽師として生きていく気もない!」
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