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「僕もそうかなと最初は思っていたんだけど。花巻君の報告を聞いてね、別人だと思ったんだ」
「だから会議では言わなかったのね」
「何故、別人と思われたんですか?」
「少年は自分の名前を僕に『りゅうじ』と名乗っていたからね」
「『りゅうじ』ですか、じゃあ名前が違いますね」
『龍一』でなく『りゅうじ』。
「三日月堂、少年のフルネームは知らないの?」
「残念ながら訊いていません。携帯電話の番号とメールアドレスは交換しているのですが」
「じゃあ、少年が名前を偽っているとかでしょうかね?」
「千田さん、それは考えられないよ。彼と知り合ったのは一年以上前だ。お客として本屋に来ているのは、それよりもっと前からです。彼がわざわざ嘘を名乗る理由はないでしょう」
そのような嘘をつく必要がなさそうだと二人も悩む。
「じゃあ、三日月堂が少年の名前を間違えて覚えていたとかは、ない?」
「それはないと思いますよ……。私は人の名前を間違えることが少なくてね。そこそこ自信があります。それに彼が来店するたびに名前を呼んで挨拶しているからね」
「間違えて名前を呼ばれれば、本人も流石に訂正するか……」
「双子とかはないかしら?」
「花巻君の報告だと表札にはりゅうじはなかったよね」
「そうか……」
「それなら会議の時に言っても良かったんじゃない?」
再度同じことを問われる。
「そりゃあ夏子さん、もしも間違いだったらりゅうじ君に迷惑がかかる。名前と顔が少し似ているだけだからね。それに、その少年が異能者とは確定していないしね」
確かに彼らから見て龍一が異能者であることは、確認が取れていない。桜の念写だけが、それを示しているにしか過ぎない。
「そうか、いつもなら直ぐ、本人に訊きますものね。貴方はパンドラ爺さんか婆さんに超能力を貰いましたかってね」
「そうそう、燐火さんがいれば嘘は通じない。質問だけで異能者かどうかは判明しますしね」
燐火とは、あのケバイ女である。
友錦 燐火 (ともにしき りんか)。
彼女の超能力は嘘を感じ取る能力であった。
人間嘘発見器である。
嘘の内容や何が真実かはわからない。
しかし、嘘をついているか否かは百パーセントわかってしまう。実に便利な能力である。
元々彼女は駅裏の小さなスナックに勤めていたが、超能力をプレゼントされると仕事を辞めた。
今は秘密結社異能者会から報酬を貰い暮している。
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