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しばらくすると、不意に内野の視線が龍一に向けられる。ぎょろりと眼を剥いて凝視する。
「お前も異能者会のメンバーか?」
問われたので「はい」と答える龍一。
しかしそれっきり内野は黙りこくる。ただ龍一の手足を観察するように見ているだけだった。龍一は、その視線を薄気味悪く感じた。
花巻が「どうしました?」と訊いたが、内野は「別に」と一言だけ述べて踵を返してしまった。
「じゃあな花巻。またあとで」
そのまま内野は仲間の後を追いかける。
「花巻さん」
「なんだ、龍一」
「やっぱりあの人もおっかない人なんですよね」
「当然。喧嘩だけならアンダーズで一番強いんじゃねぇ~の。なんせ元プロレスラーだしよ」
「一番の強者……」
確かに強そうだった。あの筋肉量。無数の額傷。蒲鉾のような両耳。鼻も軟骨がなくなっている様子だった。気合の入った眼差しからは、格闘経験の豊富さも感じられた。
あの人は、間違いなく強いだろう。
内野だけじゃない。他のアンダーズメンバーも、かなりの腕扱きだと思えた。チンピラ風の外見だからといって侮れない人物たちだろう。
龍一と地下組織アンダーズとのファーストコンタクトは、こうして終わった。
龍一は予想する。このサマーキャンプで再び彼らと揉め事が勃発するのだろうと。
それは簡単な推測であり、現実になるのであった。
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