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今度は前方から自転車に乗った他高の女子生徒が走って来る。
短いスカートが、風に靡いてきわどく揺れていた。
見えるか!
心で叫んだ龍一の姿勢が若干沈む。
さりげなく、できるだけさりげなく、好奇心のままに行動する。
「ちっ、残念……」
見えなかった。
龍一とて年頃の高校生だ。異性に興味を抱く。
しかしここまで異性のパンツが気になることはなかった。
まだ龍一は、自分の中に芽生えた新たなる興味に気づいていない。
住宅街に入った龍一の周りから人気が途絶える。
静かな住宅街では殆ど人とはすれ違わなかっため、再び超能力について考えはめた。
一つ一つ自分が知りうる超能力のタイプを、潰していくように試してみるしかないだろう。
それで自分の超能力が何かがわかるかもしれない。
自室に帰れば様々な超能力を記載した本が幾らでもある。
結局あれこれ悩んだ結果、自宅に到着するまでには何も回答が出なかった。
「まあ、あせることはないよな――」
そう言いながら龍一が玄関のノブを捻ろうとした瞬間、唐突にカシャとカメラのシャッターを押したような音が聴こえた。
「ん?」
後ろを振り返る龍一。
誰もいない。
なんだろうと思い周囲を見まわすが、これといって不審なところは見当たらない。
静かな住宅街。辺りの色が夕焼けのためにオレンジ色に染まりかけていた。
いつもと変わらない近所が見えるだけで、歩いている人すら見当たらなかった。
「空耳かな――」
気のせいだろうと、そう思った。
扉を開いて「ただいま~」と声を張ると、キッチンのほうから母が「おかえり~」と明るく返して来た。
そのまま階段を駆け上った龍一は、自室で制服から私服に着替えると、ぎっしりと詰まった本棚の前に仁王立ちする。
「え~と、これとこれと……」
数冊の本を手に取ると、ベッドに寝そべった。
どれもこれも幾度と読み返した超能力研究者の本である。
超能力を科学の目線から集録した本だ。
「参考になるだろう――」
龍一は夕食までの時間を、結局読書に費やした。
窓の外は、もう暗くなっていた。
時計の針は、七時を指している。
二十分ぐらい前に姉も帰ってきた様子だった。
そろそろ父も帰宅する時間だろう。
「もう、こんな時間か――」
もうじき夕食だろうと部屋を出て一階におりていく。
結局、自分の超能力が何かはわからなかった。
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