ドラゴンとパンツと闇の謎

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夕暮れの空にキラリと流れ星が煌めいた。 「あら、今日も誕生したみたいですね」 神社の境内。 落ち葉を竹箒で掃いていた巫女服の少女が、幼い顔で夕空を見上げながら言った。 「最近、あの婆さんの活動も活発ですね」 巫女服少女の他にも、もうひとり女性がいる。 鳥居の側に置かれた狛犬の石像に寄り掛かる女性は、グレイの女性用ビジネススーツにしゃれっ気の少ない黒のパンプスを合わせていた。 巫女服の少女は、まだ小学生ぐらいに見えるが、スーツの女性は二十歳半ばに窺えた。 「この一週間で、もう三人。今ので四人目になるわ……。ちょっと人数が多すぎよ」 スーツの女性は眉間を指で摘まみながら険しい顔を見せる。 強気なキャリアウーマンをイメージさせる彼女は、ポケットの中から携帯電話を取り出すと、巫女服の少女に差し出す。 「桜、悪いけどさ。今の奴も念写してもらえる。どうせ調べるはめになるんだろうからさ」 「はい、いいですよ。夏子さん」 巫女服の少女は無垢な笑顔で微笑むと、スーツの女性から携帯電話を受け取った。 「ちょっと待ってくださいね。すぐに終わりますから」 「急がなくてもいいわよ。もう今日は私、署には帰らないから。直帰の連絡も入れたしね」 そう言いながらスーツの女性は、豊満な胸を抱え上げるように両腕を組んだ。 巫女服の少女は、受け取った携帯電話を右掌に乗せると左掌を上から沿えた。 そして、瞼を閉じると俯いて念ずる。 しばらくすると少女の周囲を渦巻くように風が巻き上がった。 スーツの女性の長い黒髪が風に煽られ揺れはじめるが、少女のおかっぱヘアーは微塵も揺れていない。 カシャと、デジタルのシャッター音が、少女の手の中から聴こえて来る。 更にもう一度、二度、三度と。 シャッター音は、計四度鳴った。 ゆっくりと瞼を開く少女。 「終わりました」 風は止んでいた。 巫女服の少女は、無垢に微笑みながら両手で携帯電話をスーツの女性に返す。 「四枚ね。わかりやすい写真が写っているといいんだけど――」 言いながら携帯電話を受け取ったスーツの女性は、すぐさま画像をチェックし始めた。
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