奇跡の母と冷たい姉とボーイッシュな幼馴染

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刹那。 「おおっ!」 見えた。 少し見えた。 よくわからないが、僅かに見えた。 更に露出は増えていく。 白! 否。 青い横しま! シマパン! ナイス、ボーイッシュ! 全部ではないが、間違いなく見えた。 「ここまで!」 静かだった部屋に張りのある月美の声が響くと同時にミニスカートの裾が下ろされた。 「もうちょっと!」 いきなりボリュームを上げた月美の声に釣られて龍一も大きな声を上げてしまった。 「だーめ!」 そう言って、あっかんべーと舌を出した月美が、踵を返して入って来た窓へと動く。 ベッドから腰を浮かせた龍一が、片手を伸ばすが届かない。 敏捷に窓の外へ出た月美が、上半身だけを反して手を振った。 いつものように微笑んでいた。 明るく。 元気良く。 そして、優しく。 「おやすみ、龍~ちゃん」 その言葉を最後に月美は、自分の部屋に窓から入りカーテンを閉めてしまう。 その間一度も月美は、振り返らなかった。 おやすみの言葉すら返せなかった龍一は、ただ呆けながら幼馴染みが消えた部屋の明かりを眺めていた。 その光も直ぐに消える。 龍一の部屋に、静けさだけが残った。 「俺も寝ようかな……」 そう言い部屋の電気を消すと、ベッドに潜り込む。 幼馴染みがプレゼントしてくれた青春の記憶が、龍一の脳裏に鮮明に焼きついていた。 ベッドの中で瞼を閉じても消えることなく浮かんで来る。 今晩の宝だ。 良い夢が見れそうだった。 「久々に、自家発電しようかな……」 こうして少年が歩む新たなる人生の一日目が終了した。
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