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「おはよー」
玄関を出ると家の前で月美が立っていた。明るい挨拶が飛んで来る。
龍一が幼馴染みに「おはよー、月美」と挨拶を返すと二人は、駅のほうに並んで歩き出す。
学校に登校するさいに二人は、いつも駅前まで一緒に向う。
そこから月美は電車に乗って隣町にある女子高に向かい、龍一は入れ替わりで電車から降りて来る親友の卓巳と合流して一緒に学校に向うのである。
幼馴染と並んで登校。
通う学校は別々になってしまったが、この生活習慣は幼稚園のころから変わっていない。
龍一が隣を歩く月美をチラリと見た。
ボーイッシュな幼馴染みは健康的でスレンダーなスタイルが魅力的な女の子だ。見事に女子高の可愛らしい制服を着こなしている。
短いスカートが揺れるたびに昨日の晩のことを思い出す。
龍一がシマパンのことを思い出してにやついていると、いきなり月美が「ねぇ、龍~ちゃん」と話しかけて来た。
ドキリとした龍一が、必死に真顔を作ってから「なに?」と返す。
「流石は叔母さん。凄く龍~ちゃんの気持ちを理解しているわね」
「なにが?」
龍一が不思議そうに問うと、月美が龍一のポケットを「これよこれ」と言いながら突っついた。そこにはレースのハンカチが入っている。
「見てたのかよ!?」
「玄関の隙間から見えたよ」
月美が揶揄する目つきで言う。
戸惑いながらも龍一は、玄関が開いていたのだろうかと疑問に思ったが、見られていたことには変わらないと肩を落とす。
また月美に恥ずかしいところを見られてしまったと情けなくなり憮然と沈む。
「龍~ちゃん、そんなにパンツが好きなの?」
「好きと言いますか……、なんと言いますか……」
気恥ずかしさに小さくなる龍一に対して月美が、何故か勝ち誇った口調で言う。
「まあ、龍~ちゃんも、年頃の男子だしねぇ。そういうのに興味を抱いても仕方ないか~」
「うるせ~よ……」
龍一が、不貞腐れるように口を尖らせる。
それが月美には可愛く見えたのか、今までと違う優しい表情に変わった。
「じゃあ~さ~、また今度、私が見せてあげようか?」
「マジ!?」
龍一が素早い動きで幼馴染みの顔を見ると、月美は逆のほうを向いて表情を隠してしまう。
しかし、ショートヘアーから覗く小さな耳が、真っ赤になっていた。
「た、たまにだったら……、いいよ」
「マジですか!?」
「マ、マジですよ……」
完璧に照れている。
だが、可愛い!
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