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「まだ、条件はあるわよ」
「ほかにも?」
この時点で龍一の警戒心は、好奇心に飲まれていた。
条件というのが、超能力を貰うための代償でなく、貰ったあとのことを話しているからであった。
棚から牡丹餅状態の話に、目が輝きはじめていた。
「超能力を得た人は、仲間内では異能者と呼び合うわ」
超能力者が他にも沢山いるような口調だった。
更に老婆は話し続ける。
「異能者になると、二つだけ性格が変わるのよ」
「性格が変貌するのですか……」
それは何だか嫌だと思う。
「一つ目は、異能者は、異能者同士でしか恋愛関係に発展できなくなるのよ」
「異能者は、異能者しか愛せない?」
「そうなのよ……」
そう言い老婆は俯き加減で溜め息を吐いた。
恋愛話ならば、龍一には関係がない。
恋人もいないし、今後できる気配もない。
十七歳にして諦めムードである。
龍一は、一つ目の性格変化を何気なく無視した。
「二つ目は何?」
「二つ目はね、新しい趣味のようなものにも目覚めちゃうのよ」
「新しい趣味ですか……」
何を言いたいのかわからない。
「そう、今まで好きでもなんでもなかったものが、急に大好きになっちゃうの」
「なるほど。本当に新しい趣味が芽生えてしまうのですね」
「そうそう、急に服のセンスが変わったり、味覚が変化したりするの。酷い人は、ウンコが大好きになったとか――、そんな例もあるわ」
「ちょっと待って下さい! ウンコが好きになるって問題でありでしょう!」
服のセンスが変わるぐらいは問題ないが、ウンコが好きになるは文化人としてダメダメだろうと声を荒立てた。
「聞いた話だと、ウンコの写真を撮りまくっているらしいわよ」
「しゃ、写真ですか……」
味覚が変わるのあとにウンコの話がでたので、食するのかと勘違いしていた龍一は、誤解があったのだとわかり僅かに安堵した。
「この二つの条件が飲めるのならば、貴方を異能者にしてあげるわよ」
「無料で?」
「ええ、タダでよ」
龍一は、親指と人差し指で自分の顎を摘まんで考えた。
超能力は、とても欲しい。
凄く欲しい。
子供のころから懇願してやまなかった夢だ。
しかし、ペナルティーが怖い。
どのような超能力を獲得できるかわからないのに、とんでもない変態的趣味が備わるかもわからないのは考えものだ。
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