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「かたづいたって?」
女刑事が訊き直す。
「例のガキを見つけたってことよ」
「お~」と、皆から声が上がる。
それから不健康そうな小説家青年が席を立ち、後ろにあったホワイトボードに写真を張り始めた。
巫女服の少女『桃垣根 桜』が念写した画像をパソコンで引き伸ばしてプリントアウトした物だ。
写真は四枚。男女の四人の顔写真が写っている。
一人は『政所 龍一』であるが、その名を殆どの者がまだ知らない。
他に三枚――。
一人はショートヘアの少女。高校生ぐらいに窺える。
もう一人は三十歳ぐらいの男性である。
しかし、最後の一枚だけ見た目が可笑しい。
写っているのは女性のようだが、長い黒髪を靡かせ顔を隠している。
咄嗟に隠したような不自然な写りかたであった。
「例のガキって、この人ですよね」
ホワイトボードに写真を貼りつけてから小説家の青年が問う。
「おうよ、名前もわかったし家もわかったぜ」
「家はやっぱり、念写にあった家でしたか?」
三日月堂が訊くと花巻が「そうだったぜ」と言いながら席に腰を戻す。
「家の標識見たらよ『政所』って書いてあったぜ。名前は多分『龍一』だろうよ。他に『源治』『つかさ』『虎子』って載ってたぜ。最後に名前があったから、あの家の子供なんだろうよ」
チャラくても、そのぐらいは推測できるようだ。
「花巻君、おみごと。あんたもたまにはやるじゃない」
女刑事の『三神 夏子』が花巻を褒めるが、随分と上から目線だった。
いつものことなのか、花巻は気にしていない様子である。
もっと褒めろと言いたげな、どや顔を見せていた。
その間も小説家の青年が、ホワイトボードに複数の写真を貼っていった。すべて巫女服の桜が念写したものだ。
「じゃあ、コンタクトは夏子さんに任せます」
三日月堂の指示に女刑事が頷く。
「これで、今月になって異能者になった人のうち、二人は居場所がわかりましたねぇ」
可愛らしい笑みで桜が言った。それに続いて小説家が女刑事に質問した。
「三神さん。この人は、どうなりました? コンタクトを取ったのでしょ?」
写真の一枚を指差す。
龍一の写真の隣に貼られた三十歳ぐらいの男性写真である。
「彼は、超能力を拒否したわ」
サラリと女刑事である三神夏子が言った。
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