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「とりあえず今月は、あと二名ですね」
桜が明るく言うと、三日月堂が表情を厳しくして話を繋げた。
「ショートヘアーの女の子は、普通の学生に見えるから問題はないだろう。悪さを仕出かすタイプには見えないからね」
確かに明るい笑みで写っている。
どんな超能力を得たとしても、悪党に凶変するような子には見えなかった。
とても健全な笑みが、皆にそう思わせる。
ホワイトボードを眺める小説家が、声を厳しくして次なる意見を述べた。
「問題は、こっちの髪で顔を隠す女性でしょうか」
花巻が黙って頷く。
ホワイトボードに貼られた写真の中に、同じような写真がある。長い黒髪で顔を隠した女性の写真である。
しかも、複数枚、似たような写真が貼られていた。
「何度念写してもこうなんです。私の念写に気づいて顔を隠すんです」
「桜ちゃんの念写、写される少し前から、なんとなく見られている感覚でわかるしね~。あ、電池切れた」
ケバイ女がこぼした最後の一言は、全員に流される。
少し間を置いてから三日月堂が話し出す。
「怪しげなのはわかるが、もう一人の少年が気になる。やはり彼を先行したほうが……。闇の念写がね、とても嫌な感じがするのですよ」
「そのお兄ちゃんの場合、そのあとの念写は全部それなんですよ」
「全部、闇しか写らない……か」
小説家が受け取っていた画像を携帯電話でチェックする。
しかし、桜から改めて貰ったものはすべてが真っ黒だった。闇しか写っていない。
「花巻君、燐火さん、暫くの間、その少年に貼りついていて貰えませんか」
花巻とほぼ同時に、ケバイ女も「いいけど」と了解する。
「三神さんを接触させる前に、どのような人間か調べたいです。超能力が何かも知ってからのほうが、安全かもしれません」
「三日月堂、今回は慎重だな」
「当然ですよ、花巻君。今回は今までとパターンが違います。いきなり三神さんを近づけるのは危険かもしれませんしね。三神さんの能力は、我々の目的には欠かせませんから」
自分の超能力に触れられた三神夏子が話に加わる。
「持ち上げすぎよ。私の能力はおまけね。確かにないよりはあったほうが、みんなのためになるけどさ」
謙遜している彼女に三日月堂が「いいえ、世界のためになりますよ」と微笑みかけた。
照れて頬をピンクに染めた三神夏子が三日月堂から視線を外す。
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