登校と下校と異能者達

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三日月ビル五階会議室。 ほんの三十分前まで、年齢性別ともにバラバラな面々が揃って秘密結社と名乗り、怪しげな会議を開いていた。 秘密結社異能者会。彼らの目的は、産まれ来る異能者たちの管理である。 今宵集まった全員が異能者であり、他の異能者が超能力で悪事を働くのをよしと思えないメンバーであった。 何故によしとしないかは、人それぞれであるが、利害が一致しての集まりであるのは確かであった。 このメンバーには、間違いなく悪党だけはいない。それだけは全員が自負している。 「厄介なことになったな……」 メンバーに三日月堂の愛称で呼ばれる男は、一人会議室に残り窓の外を眺めていた。思わずもらす言葉に暗いものが混ざる。 五階の窓から見える景色は、駅前大通りを駆け抜けて行く車のヘッドライトばかりであったが、その灯りが映し出す街角には、まだまだ人通りがチラチラと見られた。 「私の予想が正しければ、嫌な展開に進んでいるやも……」 振り返った三日月堂は、ホワイトボードに貼られたままの写真に目を移す。 三日月堂は、まじまじと龍一の写真を凝視していた。 そんな中、静かな会議室にカチャリとドアノブが廻される音が響くと、扉を開けて二人の男女が入って来た。 「三日月さん、桜ちゃんを送ってきました」 「ご苦労さまです。千田さん、夏子さん」 小説家と女刑事である。 二人は未成年である巫女服少女の桜を自宅まで送って来たのだ。 この春、中学生になったばかりの少女を夜な夜な一人で帰すわけには行かず、刑事である三神夏子が送ってくると言い出したのだが、今度は小説家の千田和人が、女性だけでは心配だと二人で送ることになったのである。 三日月堂は優男だが、小説家の千田和人は優男を通り越して痩せ男である。雄としは兎に角弱そうだ。 そのような脆弱な男がついてきても、夜の不安から女子二人を守れるのだろうかと、刑事である三神夏子は思っていたが、彼女は千田が自分に好意を抱いていることに気づいていない。 刑事としては鋭い勘を持ち合わせているが、事自分の恋愛に関しては鈍い様子である。
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