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嘘発見能力を異能者会のために使う。超能力を人にばらさない。これらが条件で、彼女は一ヶ月にして五十万円の報酬を貰っている。
彼女と行動を共にしていたチャライ男、花巻陸男(はなまき りくお)も同額の報酬を貰っている。
それらの資金源が異能者会にあるのは、すべて売れない小説家の千田和人が提供しているからだ。
何故にそれほどの金額を売れない小説家が出せるかは、彼の超能力に秘密があった。
千田和人の超能力は、自分が執筆した小説の生原稿を黄金に変える能力なのだ。
純金を作り出せるのだ。
しかし彼は、生原稿以外を黄金に変えられない。
ワープロやパソコンでプリントアウトした原稿は、何故か黄金に変わらない。
自分で筆を執った原稿しか金には変えられないのだ。
だから千田は、売れない小説家でありながら食いぶちには困っていない。
本当は、自分で書いた小説が売れて、大御所小説家として印税で暮しながら物語を作り続けたいのが本望であった。
だが、なかなか人生とはうまくはいかない。
今彼が書く小説は、原稿ごと黄金に変えたほうが金になるのが現状だった。
まあ、バイトをしながら読んでも貰えない小説を書き続けるよりはましだと本人も最近では思い始めていた。
困ると言えば、金に変えた原稿を千田本人が現金に変えてばかりいると怪しまれる点であった。
普通の家柄に産まれた千田が、ゴールドショップにちょくちょく純金を持ち込めば怪しまれる。
そこで考えられた換金法は、資産家の息子である三日月堂が代わって換金する手段であった。
彼なら何度も純金を現金に換金しても、親の金を息子が使い込んでいる程度にしか怪しまれないからである。
「それにしても、この闇の念写さえなければ、いつもと同じ段取りで確認できるのですが……」
黒い写真を手に取り、千田が残念そうに言う。
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