登校と下校と異能者達

46/46
前へ
/823ページ
次へ
「まあ、今回は慎重に行こうと決めたんだから、そうしましょう。ねえ、二人とも」 三神夏子の言葉に二人の男が頷いた。 「でも、三日月堂。念は入れて損はないでしょう。その『りゅうじ君』の電話番号を教えてくれないかしら。私のほうでも彼を調べておくからさ」 刑事としてのルートを使うのだろう。職権乱用だが、今は心強い手段である。 国家権力は、やはり偉大である。 「そうですね。本当はプライベート情報だから、教えるのは心苦しいのですが、ことがことですからね……」 と、言いながら三日月堂は携帯電話を開いて番号を女刑事に見せる。 夏子は番号を手帳にメモると「じゃあ、私も帰るわね」と言って踵を反した。 扉の前で「おやすみなさい」と手を軽く振ると会議室を出て行ってしまう。 「本当に、ただ似ているだけでしょうかね?」 女刑事を見送った小説家が、まだ今一つ納得行かないのか、話を蒸し返した。 「同一人物か、似ているだけか、言い出した僕にもわからないぐらいです」 「まあ、『りゅうじ』は夏子さんに任せて、『龍一』は、あの二人に様子を見ていてもらいましょう。ちゃんと調査すればはっきりしますよ」 「あの二人に、このことを知らせますか?」 花巻陸男と友錦燐火にだ。 「追々僕から話しますよ」 「その辺は貴方にお任せしますよ、三日月堂さん」 そう言いながら小説家も出口を目指す。 「では、私も帰ります。また」 「はい、おやすみなさい」 小説家を見送ると、三日月堂はまた独りとなる。 その後も彼は、五階の窓から通りを走る車のヘッドライトを眺めていた。 やはり闇の念写が脳裏から離れないのだ。 不安が強く残った。
/823ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18311人が本棚に入れています
本棚に追加