買い物の約束と人質誘拐と闇の正体

3/75
前へ
/823ページ
次へ
龍一が「なんだよ?」と返事をしようとした時である。月美の仕草が可愛らしく変化した。 モジモジと動く引き締まった腰。チェックの短いスカートが揺れるのを、両手で押さえて止めている。頬が桜色に染まっていた。 瞳を泳がせる表情が可愛らしい。 喉の先まで出かかった言葉を飲み込んだ龍一が、ドキドキと胸を弾ませながら幼馴染みを見守った。 「あのね、今日さ、買い物に付き合ってもらいたいの……」 「買い物?」 思ったよりも普通の申し出に、拍子抜けしてしまう龍一。 いままで何度も買い物ぐらい付き合ったことがある。 ジョギング用のシューズを買いに行くとか、学校で使う辞書を選んでくれとか、新しいドライアーを買いに行くとか、そんな詰まらないことばかりである。 「何を買いに行くんだよ?」 興味なさげに訊く龍一であったが、断る気はない様子である。 龍一は、人から頼まれたことを殆ど断らない。 「あのね、そのね……」 モジモジする月美。可愛いがじれったい。 「なんだよ?」 「新しいね……」 「新しい?」 「新しい下着を買いに行こうかなって……」 一瞬、言葉の意味を理解できずに龍一が悩んで固まる。キョトンとしてしまう。 龍一の脳内で、言葉の意味合いが正しい言語に置き換えられ整理される。 青臭い脳内コンピューターが、官能を弾き出す。 新しいは、おにゅう。 下着は、パンツ。 イコール。おにゅうのパンツを買いに行く。 更に正しく言葉を整理する。 月美は自分と一緒に、おにゅうのパンツを買いに行きたいと言っている。 月美が買うパンツだ。それは自分で穿くパンツだろう。間違いない。他人が穿くパンツを月美が買いに行く理由がない。 「えーと、月美さん。どういうことでしょうか……?」 言葉の意味は理解していた。これは、確認の質問である。 「だから、龍~ちゃんが、どんな下着が好きなのか、参考に訊きたくて……」 だからとは何だ!? だが、これでわかったことが増えた。 月美は、龍一が好みのパンツを知りたいのだ。 だから一緒に女性用下着売り場に行って、選んでもらいたいのだ。 なるほど、その「だから」のようだ。 「月美、確認をしたいのだが!?」 「な、なぁに、龍~ちゃん……?」 鼻息を粗くして問う龍一。核心に迫る。 「お前の言っている下着とは、亀仙人風に述べれば、パンティーですよね!?」 「う、うん……」 視線を合わせず月美は頷いた。
/823ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18311人が本棚に入れています
本棚に追加