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龍一が「なんだよ?」と返事をしようとした時である。月美の仕草が可愛らしく変化した。
モジモジと動く引き締まった腰。チェックの短いスカートが揺れるのを、両手で押さえて止めている。頬が桜色に染まっていた。
瞳を泳がせる表情が可愛らしい。
喉の先まで出かかった言葉を飲み込んだ龍一が、ドキドキと胸を弾ませながら幼馴染みを見守った。
「あのね、今日さ、買い物に付き合ってもらいたいの……」
「買い物?」
思ったよりも普通の申し出に、拍子抜けしてしまう龍一。
いままで何度も買い物ぐらい付き合ったことがある。
ジョギング用のシューズを買いに行くとか、学校で使う辞書を選んでくれとか、新しいドライアーを買いに行くとか、そんな詰まらないことばかりである。
「何を買いに行くんだよ?」
興味なさげに訊く龍一であったが、断る気はない様子である。
龍一は、人から頼まれたことを殆ど断らない。
「あのね、そのね……」
モジモジする月美。可愛いがじれったい。
「なんだよ?」
「新しいね……」
「新しい?」
「新しい下着を買いに行こうかなって……」
一瞬、言葉の意味を理解できずに龍一が悩んで固まる。キョトンとしてしまう。
龍一の脳内で、言葉の意味合いが正しい言語に置き換えられ整理される。
青臭い脳内コンピューターが、官能を弾き出す。
新しいは、おにゅう。
下着は、パンツ。
イコール。おにゅうのパンツを買いに行く。
更に正しく言葉を整理する。
月美は自分と一緒に、おにゅうのパンツを買いに行きたいと言っている。
月美が買うパンツだ。それは自分で穿くパンツだろう。間違いない。他人が穿くパンツを月美が買いに行く理由がない。
「えーと、月美さん。どういうことでしょうか……?」
言葉の意味は理解していた。これは、確認の質問である。
「だから、龍~ちゃんが、どんな下着が好きなのか、参考に訊きたくて……」
だからとは何だ!?
だが、これでわかったことが増えた。
月美は、龍一が好みのパンツを知りたいのだ。
だから一緒に女性用下着売り場に行って、選んでもらいたいのだ。
なるほど、その「だから」のようだ。
「月美、確認をしたいのだが!?」
「な、なぁに、龍~ちゃん……?」
鼻息を粗くして問う龍一。核心に迫る。
「お前の言っている下着とは、亀仙人風に述べれば、パンティーですよね!?」
「う、うん……」
視線を合わせず月美は頷いた。
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